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自己学習コンテンツが手軽に手に入る今、集合研修を行う意味とは

H&innovation staff

 H&innovation株式会社の長町です。IT技術の発展により、自己研鑽したい人には便利な時代になったものです。

 あるスキルを学びたいと思い立ったら、書籍であれば、電子書籍を「Kindle(キンドル)」で購入すれば、数秒後には読めます。移動中でも耳から学習もでき、本の内容を音読してくれる「Audible(オーディブル)」や最近では「Clubhouse(クラブハウス)」(音声配信SNS)があります。

 ビジネス用の自己学習コンテンツも、「GLOBIS(グロービス)学び放題」等で安価でわかりやすい研修動画がいくらでも視聴できますし、YouTubeでも自己学習のための無料コンテンツも充実してきました。

 多くの研修会社や講師にとって、研修コンテンツは「秘伝のたれ」のようなもの。有償で受講する以外の人には決して見せたがらないものですが、コンテンツに手軽に手が届く現代では、コンテンツ自身を秘匿すること自体にはあまり意味がなくなってきているのではないでしょうか。  では、そんな誰でも自己学習コンテンツが気軽に手に入る時代、費用と手間をかけて集合研修を対面やリモートで行う意味は何でしょうか。

やるべき研修、やめるべき研修

 プレゼンスキルにせよ、ロジカルシンキングにせよ、知識を得るためなら、前述の通り動画や書籍で手に入ります。一方、集合研修となると、リモートでも20名ほど集めたとして、外部研修会社に依頼すると、数十万円のコストはかかるでしょうし、参加者の人件費も実際にはかかります。

 はたして100倍以上のコストをかけて集合研修する意味があるのでしょうか?

 自分は「ある」と考えます。

 「自分では気づかなかった自分に出会える」「講師やほかの受講生から気づきが得られる」「業務では気づけなかった自身の課題に向き合える」研修は是非とも継続して行うべきです。

 反対に、「恒例行事的に惰性でやっている研修」「学んだことが仕事で活かせない研修」など、目的がはっきりしない、新たな学びを提供できない研修はかけたコストや工数に見合った効果が得られないので改善するか止めるべきだと考えます。  

 つまり、研修の価値とは、講師や受講者との「共創」による参加者の成長、スキル獲得が促されることだと思います。

中堅メーカーの幹部研修の事例

 数年前、とある上場中堅メーカーで、マネジメントをテーマに5名の部長クラスの人材に1年以上研修を行ったことがあります。コンテンツはマネジメントの基本となるコミュニケーションを中心とした非常にオーソドックスなものでした。正直、最初はみな幹部候補の優秀な人たちだけに、皆「いまさら研修を受けるの?」と内心では思っていたに違いありません。なかでも自他ともに認める「社内きってのエース」である、まだ30代後半の受講者は当初、明らかにその気持ちが態度に出ていました。

 しかし、講師のファシリテーションによるワークや現場での実践の発表、受講者同士の対話やフィードバックの交換を重ねるうちに、彼に変化が起きました。

 研修の価値を認め、積極的に発言し、研修を受け身から主体的に参加するようになったのです。そして、研修後半には、社内での評価が、ただただ怖い存在から、「硬軟取り混ぜたマネジメントができる、上司にしたい人NO.1」となったのです。研修で行ったマネジメント研修のコンテンツ自体は「情報」として彼は知っていたのでしょうが、研修を通じて、講師や参加者との化学反応が起き、「知識として知っている」から「知識を実践できる」ようになったのです。今では受講者5名のうち、2人は役員となり、若き経営陣として全社の経営を引っ張っています。

研修で「共創」を生み出すためのポイント

 人材育成に関する有名な調査に、1996年に発表された米国のリーダーシップ研究の調査会社であるロミンガー社のものがあります。この調査では経営リーダー人材としてリーダーシップを発揮する人たちに「どのような出来事が自己成長に役立ったか」と尋ねたところ、「経験が70%、薫陶(周囲の人から受けた影響やアドバイスなど)が20%、研修が10%」という結果が出ました。仕事として読み替えると、「自分自身の行動によって得られた仕事上の経験からが70%、上司やそれ以外の上位者あるいは取引先との関係からが 20%、研修や書籍からの学びが10%」と言えます。(『70:20:10の法則』)。

 日本企業の正社員年間労働時間を2000時間だとして、毎月1日の研修を受けるとすると、8時間/月×12か月で、96時間。毎月1回研修を行うというのは社員育成に熱心な企業だと思うのですが、それでも全労働時間の約5%。それで成長の1割という貢献寄与度があるのは高い割合ではないでしょうか。この法則から、成長において実務を通じた経験が大部分を占めるので、研修も実務と相関した内容にした方が効果的であると考えます。

 そこで、研修を行う際に大事なポイントを下記にまとめました。

 ● 研修は生ものであり、共創の場であるということを理解し実践できる、
   経験豊富な講師を研修のファシリテーターとしてアサインすること

 ● 一方的な知識伝達する部分は研修時間内では最低限にし、
   ワークや発表を中心とする内容にすること

 ● 研修で学んだことを実務で生かせるよう、現場部門とも目的や内容を共有しておくこと

 上記は、オンライン開催を含む、集合研修に共通して言えるポイントです。
 みなさんの社内研修はいかがでしょうか。


 日々、企業経営者や人事育成部門の方と話をして、ただなんとなく研修を実施している企業と、研修の意味と効果を真剣に考え、試行錯誤している企業の差が、特にコロナをきっかけにどんどん広がっていることを痛感します。    
 なんとなく惰性でやっている研修、一方的な知識伝達に終わっている研修、仕事に戻ったらすぐ忘れられてしまう研修。社内にそんな研修がもしまだあったら、ぜひ見直してみてほしいと思います。

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